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2007.03.13

夢の少女

「夢の少女」~短編小説~

ガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ

俺は今、電車に乗っている

ガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ

友達と遊びに行った帰りだが、途中で分かれたので俺は一人で電車に乗っている
外を見ると、夕日が出ているが空はかなり曇っている
(来年は受験だな)と中学二年の俺は夕日を見ながら思った

「次は○△駅~ ○△駅~」

プシュー

扉が開く
暖房の入っていた電車に、外の冷気がもぐりこんでくる
俺は、少し身震いをした

「もう冬だもんな…」

誰ともなしにつぶやいていた
この駅では誰も降りないらしい
そう、思っているうちに扉が閉まり、暖かい暖房がまた入った

ふと周りを見渡した
俺が乗っているのは二両目だ
俺が降りる駅は二両目が一番改札口に近いからいつもここに乗っている
そして、何気なく周りを見るとこの車両には俺を含めて六人いる
まず自分
そして同じ座席に三十代後半か四十代前半くらいのおばさんと座っていて、その子どもらしい小学生低学年くらいの男の子が端で寝ている
隣の座席にはいかにもエリートっぽいサラリーマンが経済の雑誌を読んでいた
前の座席には受験生で塾の帰りであろう、中学三年の女子生徒が二人、座っている
前の女子の制服はうちの学校のじゃないなと思った
まぁ、同じ学校でもきっと誰かはわからないだろうが

その、二人の女子生徒は喋っているのだが、主に片方だけが話しているみたいだ
もう一人はどちらかというとおとなしそうで、話にあいずちを入れるくらいの三つ編みの女の子だった
話し声が嫌でも聞こえてくる

「ほら、今日渡さなきゃだめだよ!」

「…うん」

「しっかりしなさい!ちゃんと伝えないと、ほかの女の子にとられちゃうよ」

「…うん」

「あぁ、もう!大丈夫なの?一両目に彼、座ってるんだから、絶対自分の気持ち言わなきゃ!」

「…うん」

どうやら、この三つ編みの女子生徒は一両目に座っている男子が好きらしい
悪いとは思ったが、つい一両目を見てしまった
一人だけ本を読んでいる男子が座っているようだった
遠いので顔は良く見えなかったが

「じゃ、がんばってね」

友達のほうは大きな声で言いながら、次の駅で降りていった

ガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ

電車に静寂が戻った

「…コン、コン」

女子生徒が咳をしだした
上着を着て、マフラーもして、手袋もしているのだが風邪をひいたのだろうか
きっと勉強疲れだろう

そのとき、

「お嬢ちゃん これ、なめたらええよ」

おばさんが女子生徒にのど飴をあげた

「え?」

「せっかく、伝える言葉も声がかすれて出なかったらだいなしやろ?」

そう言って、ニコッと笑った
どうやら、おばさんにも聞こえていたみたいだ

「…ありがとうございます」

女子生徒は恥ずかしそうにうつむいた

俺は、おせっかいなおばさんだなと思ったが、不思議とその行動が自然に見えてあまりにもおかしなように見えなかった

よく見ると女子生徒は、手が震えている
のど飴では暖かくならないから、当然だ

「…あの、これ良かったら」

俺は自然と、女子生徒に喋りかけていた
そして、ヒュっと持っていたカイロを彼女のほうへ投げた
本当に手がかじかんでいたのか、彼女はうまくとれず、カイロはひざの上にポンっと乗っかった

「あの…これは?」

「…大事なプレゼント渡すんですよね 手が震えてたら格好が付かないし、もしかじかんでいて落としたら大変じゃないですか」

「…ありがとう」

そして、俺は自分でも気付かないうちに笑顔で喋っていた

ガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ

また静寂が訪れた
しかし、嫌な静寂ではなく、とても温かい静寂だった

電車はトンネルに入った
周りが暗くなる
ついに、そのときが来たようだ
女子学生が決心したように、立ち上がった

おばさんが言った

「お嬢ちゃん 頑張りや!」

「お姉ちゃん 頑張って!」

いつのまにか小学生の男の子も起きていたようだ

「…頑張ってくださいね」

俺も、自然にいうことが出来た

そのとき

「おい、振られても落ち込んで人生を棒に振るなよ 男なんていくらでもいるんだから」

隣の座席に座っていたサラリーマンの男の人が言った
彼も、また聞いていたみたいだ
それに、これは彼なりの優しい言葉だと思った

彼女は扉まで行き、立ち止まり、こちらを向いた

「あの…ありがとうございました!」

彼女は頭を下げた
とても深く、深く

そして、次にあげた顔はとても希望に満ち溢れていた

彼女は一両目へといった

電車がトンネルを抜けた

あたりが明るく、白くなっていく
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この記事へのコメント
ロキさん、こんばんは。
ゆんみんと申す者です。

この短編小説にはやられました!
もう胸がじぃぃんと温かくなって胸がきゅん死しそうです。
こういう電車でのやり取りってなかなか今の時代ないですけど、こういう温かい人達がいたら素敵ですよね。
すっごく可愛くて、温かくて、勇気がでる小説ですね!

私これでロキさんのファンになってしまいました。
もしよかったらリンクさせてください!
私個人のブックマークです。
どうか了解の方よろしくお願い申し上げます。
では失礼します。
Posted by ゆんみん at 2007.03.29 05:21 | 編集
ファンだなんてw
いやいやありがとうございます。

趣味で自己満足のために書いていたものが良いと言って貰えるとこれからも頑張れます。
夢と言うのはときに人間の本質を映すと思っています。僕の本当に望んでいる世界が「夢の少女」なのかもしれないです。

リンクの件はもちろんお願いします。リンクフリーですので。
Posted by ロキ at 2007.03.29 08:20 | 編集
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