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2007.03.30

夢の少女 アナザーストーリー

ガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ

もう、この電車の音にもうんざりだ
毎日乗っていればさすがに気がめいる

ガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ

俺は休みの日以外は毎日この電車に乗って会社に行っている
自分で言うのもなんだが結構頑張って良い会社についたつもりだ
しかし、頑張ったせいで仕事場所が遠くなるなんて皮肉なものだ…
「次は○△駅~ ○△駅~」

プシュー

扉が開く
外の冷たい空気が車内の温まった空気を押し出していく
俺は少し顔をしかめた

寒い
やはり暖冬と言われていても外は冬である
朝開けたカイロはもう酸化しきっている

そんなことを思っているうちに扉は閉まった
また生ぬるい暖房が入る

なんとなく周りを見てみると学生が何人かとウチの母親と同じくらいの年であろう女性が乗っていた。

「あいつ等はきっとゆっくりと休める場所があるんだろうな」

俺は結婚している
別に仲が悪いとかではないと思う
でも何故か家に帰るとお互いにあまり接しなくなる
家に帰っても俺は会社の仕事が残っている エリートを選んだ宿命である
そして嫁は俺を邪魔しないで置こうと話しかけなくなる
仕事はやりやすいのだがこれが結婚生活というものなのだろうか?
もちろん心が休まったと思ったことが結婚してから一度もなかった

同じ車両の女子学生の話がかすかに聞こえてきた。

「ほら、今日渡さなきゃだめだよ!」

「…うん」

「しっかりしなさい!ちゃんと伝えないと、ほかの女の子にとられちゃうよ」

「…うん」

「あぁ、もう!大丈夫なの?一両目に彼、座ってるんだから、絶対自分の気持ち言わなきゃ!」

「…うん」

どうやら、片方の女子が告白をするらしい
こんな電車の中でしなくてもいいのに…
まぁ俺には関係ないな
と思いつつもやはり気になってしまう

女子学生のほうを横目で見るともう一人のほうは帰ったらしい
一人で咳をして座っていた

そのとき

一人の女性がいきなりその女子学生にのど飴をあげていた
そう、俺の母親と同じくらいの年の女性である

おいおい
おせっかいなおばさんだな

そう思っていたのだがその二人を遠くから見ているとだんだんと薄れてきた
会話は聞こえないがその二人はとても温かく見えた

するとその前に座っていた少し内気そうな少年もカイロを渡していた
きっとあのおばさんが飴をあげていなかったら少年もカイロなど渡していなかっただろう

その他人同士の関わっている姿はおかしいはずなのに
何故かとても自然で当たり前のような感じがしてきた

女子学生もおばさんも少年も笑顔だった

俺は…
俺はどうだろう?
あんな気持ちになれるのだろうか?

ガタッ ゴトッ ガタッ ゴトッ

静寂が訪れた
しかし、とても気持ちの良い静けさであった
そう、たとえ会話に入っていない俺でもなんだかその姿を見ていただけで優しくなれた

電車はトンネルへと入った
周りの景色が見えなくなる
ついに女子学生が決心したようだ
力強く立ち上がった

他の人が声援を送る

「お嬢ちゃん 頑張りや!」

「お姉ちゃん 頑張って!」

「…頑張ってくださいね」

そのとき

「おい、振られても落ち込んで人生を棒に振るなよ 男なんていくらでもいるんだから」

自分で言って自分でびっくりした
こんなことを言うのは初めてだったから
いや、見ず知らずの他人に喋ったのも初めてである
でも、不思議と恥ずかしくなくむしろ言えて良かったという気持ちになれた
ただ、ちょっときつい言い方になったかなと軽く反省をしていた
会ったこともないし、これからもきっと出会わないと思うけど、何故か彼女には頑張って欲しいと思っていた

彼女は連結の扉の前まで行き、立ち止まり、こちらに振り向いた

「あの…ありがとうございました!」

深く深くお辞儀をしていた

そして上げたときの顔は希望に満ち溢れていた

その顔を見たとき、俺は分かった気がした
この電車の同じ車両に乗っていた時点で俺たちはきっと他人などではなかったのだと
きっとこれから先にもこのメンバーでこの車両に乗ることはないだろう
しかし、それでもいい
だからこそ
ここにいる人たちには幸せになって欲しいと真剣に思う

彼女は一両目へと行った

電車はトンネルを抜けようとしている

ふとこんなことを思った

「帰りにアイツにケーキでも買っていってやろうかな?」

こんなささいなことで出会った人にも幸せを願うことが出来るようになったのだから
人生のパートナーの幸せは願うだけでなく俺が叶えてやろう
そう俺は思っていた

電車がトンネルを抜けた

あたりが明るく、白くなっていく
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この記事へのコメント
素敵なお話ですねw
ほんの一瞬でも触れ合えた時間は、それぞれにとって
素敵な思い出の一つとなるのでしょうねw

これから続く人生が、素晴らしいものでありますようにw


Posted by さくら at 2007.03.30 08:37 | 編集
仕事など社会のことなんかまったくの無知で書いたので少し心配なんですよ。本当はそんなんじゃない!とか言われそうでw

こういう何気ないことがとても幸せに感じるんです。
そで振り合うも他生の縁っていうことですw
Posted by ロキ at 2007.03.31 00:24 | 編集
ひとに対するw
 ほんのちょっとの
思いやりってほんと
 大切だと思いますョ
ゝ( ゚∀゚)メ(゚∀゚ )ノ☆感心♪
 ゎたしもあしたから
新たにがんばろうvvv
Posted by 106(とむ) at 2007.03.31 06:43 | 編集
このお話は本当に心温まって好きです。
素敵なお話ですよね。
会社勤めの大変さも経験した事無い様子なのにちゃんとよく書けていて感心しました。
一瞬だけしか触れ合わなかったけれども、とても優しい気持ちになった自分自身と奥様への優しさに感動しました。

とっても素敵なお話だな〜とつくづく思います。
Posted by ゆんみん at 2007.03.31 16:51 | 編集
>106(とむ)様
コメント、ありがとうございます。
ほんのちょっとのことなんですけど、それをやるには凄く勇気がいりますよね。
そう考えると最初のおばさんが一番凄い人ということになりますw

>ゆんみん様
本編で出番の少なかったエリートサラリーマンが何故最後にあんな言葉をかけたのかということを自分で書き終わった後考えていたらこの「アナザーストーリー」が出来ました。
まだまだ未成年で社会の厳しさも知らずに書いたのでちょっと心配なのですが…

きっと帰ってケーキを渡された奥さんはびっくりした後喜ぶんでしょうねw
Posted by ロキ at 2007.03.31 17:29 | 編集
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